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金型設計
5. 金型設計 ラペロス® LCPは異方性がありますので、基本的な金型設計上の諸原則を遵守するだけではなく、この異方性を考慮に入れた金型設計が必要です。成形品の物性はラペロスそれ自身と充填材の配向の方向とその程度によって支配され、また、この配向は材料が流動する際の剪断力によって引き起こされます。従って、キャビティ内での材料の流動パターンを、最終製品に対する要求特性との関連において考慮しなければなりません。一般に配向は肉厚が薄いほど顕著となります。成形品が要求特性を満足するよう、部品設計者と金型設計者とが緊密に連帯する必要があります。また、ウエルドライン部ではラペロス本来の強さが発揮できない場合がありますので、金型設計上できるだけウエルドラインが生じないよう配慮が必要です。
ラペロスは金型に対する腐食性が比較的小さいので、標準的な金型材料はすべて使用することができます。充填材の中には金型を摩耗させるものもあり得ますので、この場合は同種の充填材が入った一般の成形材料に対して行うのと同様に、適切な鋼材を選んだり、また焼き入れ等の対策が必要です。 表5-1 各金型のA130に対する耐摩耗性
HPM31は日立金属工具鋼株式会社のプラスチック金型用鋼であり、STAVAXはウッデホルム株式会社のプラスチック金型用鋼です
一般に加工のしやすさでは半円、台形、円形ランナの順ですが、断面積と圧力損失を考えると有利な方から円形、台形、半円の順ですので、円形または台形のランナを推奨します。経済性も加味した最適ランナ径は、必要なランナの長さ、製品のサイズ等によって異なりますので一概にはいえませんが、2~5mmが一般的です。ランナ長はできる限り短くして下さい。多数個取りの金型では、キャビティ間のバラツキを少なくするため、各キャビティまでを等長とすることが望まれます。また、スプルサイズは射出成形機のノズル穴径に対して大きすぎるとスプル内でジェッティングを起こしエアーを巻き込んでしまい、ブリスター発生の原因になることがあります。そのため、射出成形機のノズル穴径に対して、ノズルタッチ側のスプル径はノズル穴径+0.5mm程度としテーパーは0.5~1°とすることをお勧めします。 ラペロスは、本質的には離型性の良い材料ですが、同時に流動性に優れ、金型表面に傷があるとそれを転写し離型性を著しく損なう場合があります。スプル、ランナの磨きもおろそかにはできないので注意して下さい。スプル、ランナの末端には樹脂溜まりを設け、製品へのコールドスラッグの流入を防止して下さい。
ラペロスの金型設計では、ゲート設計が特に重要です。ラペロスは異方性がありますので、ゲート位置は充填パターンを考慮して決められなければなりません。特にラペロスの優れた性質を製品の特定の方向に活かしたい場合には、それを流動方向とするのが原則となります。製品形状が複雑で、充填過程でその方向がかなり乱れるものの場合はそれ程ゲート位置の影響は考えなくても良いでしょう。ゲート方式としては、一般に用いられるサイド、ピン、サブマリンゲートすべて可能です。
ラペロスが成形時にガスを発生することはほとんどありませんが、キャビティ内の空気を抜いて充填を容易にするためにエアベントを付けるのは良い方法です。ラペロス用のエアベントの深さは1/100~2/100mm程度が最適です。この程度の深さでは空気の流路となる断面積が限られますので、空気が溜まりやすい所だけでなく、なるべく広い範囲にわたってエアベントを付けるようお勧めします。
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