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成形不良と対策
9. 成形不良と対策
表9-1 成形不良の原因と対策
不良現象 |
原因 |
対策 |
1. フローマーク |
(1) 樹脂のゲート部通過時に発生するジェッティング模様が表面に残存。 |
<1次対策>
ジェッティングを防止する。
a. 初期のゲート通過速度を遅くする。
b. ゲートを拡大する。
c. 流動性の良いグレードに変更する。
d. 樹脂温度を上げる。 |
<2次対策>
ジェッティングが発生しても模様が残らないようにする。
e. 金型温度を上げる。保圧力を上げる。
f. ゲート位置を変更する (ゲート通過後の直進距離を短くする)。
・流れがコアにぶつかる位置にゲート変更する。
・薄肉部にゲートを変更する。
g. タブゲートを使用する。 |
(2) 樹脂のコーナ部や偏肉部(薄肉部⇔肉厚部)通過時に生じる流速変化による流れ模様が表面に残存。 |
a. コーナ部にR付けする。
b. 肉厚の切り替わり部にゆるやかな勾配やRを付ける。 |
(3) ガス抜き不良 |
ガスベント溝を強化する。 |
2. アバタ、湯ジワ |
(1) キャビティ内圧不足による樹脂のキャビティへの密着不良 |
a. 保圧力を上げる。保圧時間を長くする。
b. ランナ、ゲートを拡大する。
c. 金型温度を上げる。樹脂温度を上げる。
d. 射出速度を上げる。 |
(2) ガス抜き不良 |
a. ガスベント溝を強化する。
b. 樹脂温度を上げ過ぎない。
c. 材料乾燥を十分に行う。 |
3. ウエルドマーク |
流動先端の融着不足 |
a. 金型温度を上げる
(ウエルド部へのカートリッジヒーターの埋め込み)。
b. 射出速度を上げる。
c. 流動性の良いグレードへ変更する。
d. ウエルド部のガスベント溝を強化する。
e. ウエルド逃がしを設ける。
f. 部分的な肉厚修正を行いウエルド部への流入パターンを変更する。 |
4. シルバーマーク |
(1) 水分や分解ガスなどの揮発成分や可塑化時に巻き込んだエア |
a. 材料乾燥を十分に行う(100℃以上)。
b. 樹脂温度を上げ過ぎない。
c. スクリュ背圧を上げる。
d. ガスベント溝を強化する。
e. ランナからガス抜き。 |
(2) キャビティ内の流動のアンバランスによるエアポケットの発生 |
(3) PE、PPなどの異材混入 |
シリンダ内のパージを十分に行う。 |
5. ひけ |
肉厚部やリブ部が冷却不足、キャビティ内圧不足のため、内部の収縮に伴ない表面が引き込まれへこむ。 |
a. 金型温度を下げる。
b. スプル、ランナ、ゲートを拡大する。
c. 保圧力を上げる。保圧時間を長くする。
d. ゲートシールするまでクッション量が残るようにする。
e. ベース肉厚に対するリブ厚みを1/3程度にする。
f. 肉厚部の肉抜きをする。 |
6. 表面剥離 |
(1) PE、PPなどの異材混入 |
シリンダ内のパージを十分に行う。 |
(2) せん断剥離 |
a. 金型温度を上げる。
b. 射出速度を下げる。
c. ゲートを拡大する。 |
(3) オイル添加グレードのオイルの分離 |
a. 初期のゲート通過速度を遅くする。
b. 可塑化時の喰込み不良によりエアを巻き込まないようにする(シリンダ温度のコントロール)。 |
7. 表面荒れ |
(1) モールドデポジット |
<モールドデポジット対策>
a. 材料乾燥を十分に行う(100℃以上)。
b. 樹脂温度を上げ過ぎない。
c. ガスベント溝を強化する。
d. 金型温度を上げる。
<キャビティの洗浄>
e. 入れ子を溶剤中で超音波洗浄する。 |
(2) キャビティへの密着不良 |
a. 金型温度を上げる。射出速度を上げる。
b. 保圧力を上げる。保圧時間を長くする。
c. スプル、ランナ、ゲートを拡大する。
d. ガスベント溝を強化する。 |
8. 真空ボイド |
肉厚成形品で表面の固化が早い場合、中心部の樹脂が冷却、収縮に伴い、表面に引き込まれる。その結果、中心部が充填不足となる。 |
a. ゲート位置は成形品の最大肉厚部に設ける。
b. ゲート、ランナ、スプル、ノズルを成形品厚みに見合うように拡大する。ゲート厚みは成形品厚みの50~60%以上にする。
c. 保圧力を上げる。保圧時間を長くする。ゲートシールまでクッション量が残るようにする。
d. 保圧時にバックフローを生じないように逆流防止弁の作動を確保する。
e. 射出速度を下げる。
f. 高粘度グレードに変更する。 |
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