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金型設計
5.1 ランナー設計 ランナーは溶融樹脂の冷却ができるだけ少なくかつ圧力損失を小さくするように設計するのが理想的ですが、これでは一般に成形品重量に対するランナー重量の比率が大きくなったり、ランナーの冷却が成形サイクルの律速になったりするため経済的ではありません。 このため許容される範囲内で細いランナー設計を心掛けるのがよいでしょう。ランナー設計には「ジュラコン® POMの成形技術」に掲載している「ランナー簡易設計図」を流用しても大きな誤りはありません。 ランナーの形状は断面が円形のものが最もよいのですが、固定型、移動型の両方にほり込まなければならない点は不利になります。このため台形ランナーがよく使用されますが標準的には次の寸法をおすすめします。 上底の長さ = (0.6~0.7) × (下底の長さ) 深さ ≒ 上底の長さ ジュラネックス® PBTもホットランナーによる成形が可能ですが、下記の点に注意しなければなりません。 (1) ガラス繊維入りグレードでは、ホットチップ、マニホールドが摩耗しないように材質の検討をする。 (2) マニホールド、ホットチップ内での樹脂の滞留が加わるので、樹脂の滞留による変色、劣化を検討する。 その他についてはホットランナー設計の一般的留意点に注意すれば問題はありません。
ジュラネックスのゲートシール時間は表5-1のようにジュラコンより短かいため成形サイクルの点では有利ですが、一方成形条件によってはキャビティ圧力が低くなり変形などの原因になるため、ジュラコンより大きいゲートであることが望ましいといえます。 ゲート設計には次の点に考慮しなければなりません。 (1) ゲートのタイプ : 成形品品質、生産性、自動化などを考慮して決める。 (2) ゲートの位置およびゲート数:変形、成形品強度(複合グレードでは特にウエルド強度)、外観などに影響する。特に変形問題にはゲート位置、ゲート数が対策の一つである。 (3) ゲートの大きさ : 一般則としては成形品厚みの60~70%の厚みのゲートをつける。 表5-1. ジュラネックス® PBT、ジュラコン® POMのゲートシール時間(ピンゲートの場合)
ジュラネックスはガスベントの設計が悪いとガス焼けして黒色化しますので外観上問題になることがあります。 前述のように表面光沢をよくするためには高速射出することがよく行なわれますが、ガスベントについては充分配慮しなければなりません。ガスがパーティングラインから追い出されるような構造のときは図5-1のように成形品外周の全面から抜くようにするのが効果的です。ベント部の深さは2/100mm以下とします。 アンダーカットが無いような形状にするのが原則です。3300では大きなアンダーカットを付ける事はできず、最高で0.5%程度です。
複合グレードの成形収縮率は小さいため許される範囲で、できるだけ大きいテーパをつけます。少なくとも1/2~1゜のテーパをつけることをおすすめします。 また離型をよくするためにはノックアウトの方式、ノックピンの位置、数などについても充分な考慮を払わなければなりません。
金型温度は成形サイクル、成形品品質などに大きな影響を及ぼしますので、その温度調節の方法についてはランナー、ゲート、ノックアウト方式などの金型構造と同様に事前検討を充分行なわなければなりません。 金型温調設計には次の点を考慮する必要があります。 (1) ヒータによる温調か? 温水などの循環方式か? (2) 温水循環方式のポイント
(3) コア冷却に対する配慮。(成形サイクル変形などに大きく影響する)
ジュラネックス用金型材質は下記の点を考慮する必要があります。 (1) ガラス繊維などによる摩耗 (2) 分解ガスによる腐食 (3) 難燃剤による腐食など 摩耗対策は焼き入れが最もよいでしょう。腐食対策は材質の選定になります。耐腐食性の参考データを得るため各種ジュラネックスを260℃で加熱し、発生するガスに各種鋼材をさらして表面の変色・腐食状況を観察したところ次のような結果を得ました。 STAVAX > SKD-11 > XW-10, NAK-55 > IMPAX > S50C また、文献によると次のような結果が報告されています。 SUS310S, SUS440C ≧ PSL > MAS-1 > SUS304 > SKD11 すなわち、ステンレス系がよいことになります。 参考のために各種金型材料の特徴を表5-2に示します。 表5-2. 金型材料の特徴
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