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4. 金型設計

目次 はじめに 成形条件 再生材 金型設計 成形収縮率と寸法精度 安全上の注意 成形不良対策


(1) 金型材質

ジュラファイド®はガラス繊維等充填材が多いため、金型摩耗に配慮する必要があります。また、成形時にごく微量の腐食性ガスが生じる場合を考慮し、耐摩耗性と耐腐食性を兼ね備えた金型材料が必要となります。図4-1にJlS規格鋼材を示します。ジュラファイド用金型材としてSKD11、SUS420J2、SUS440Cを推奨します。また、金型の延命のため、金型表面処理が有効であり、PVD法によるセラミックコーティング(表4-1参照)、一例として窒化クロム(CrN)コーティングを推奨します。

 

 

図4-1 JIS規格鋼材プロット

 

 

表4-1 PVD法によるセラミックコーティング
膜種
色調
硬度(Hv)
摩擦係数
耐食性
耐摩耗性
耐酸化性
TiN
金色
2000~2400
0.45
ZrN
ホワイトゴールド
2000~2200
0.45
CrN
銀白色
2000~2200
0.30
TiC
銀白色
3200~3800
0.10
TiCN
灰紫色
3000~3500
0.15
TiAlN
黒紫色
2300~2500
0.45
Al2O3
灰色
2200~2400
0.15
DLC
黒色
3000~3500
0.10

 

 

(2) 金型温調

金型は130℃以上に加熱する必要があり、通常カートリッジヒータを使用しますが、加圧熱水温調、油温調を行うと型温分布がより均一となります。

固定及び移動側取付板にもヒータを設置してください。

 

(3) スプル、ランナ

スプルのテーパは2~3度が必要で、ランナは円形または台形が標準です。スプル及びランナの先端には必ずコールドスラッグウェルを設置してください。スプルはよく研磨してください。研磨が不充分だと離型不良を起こす危険性があります。

 

(4) ゲート

ピンゲート、トンネルゲートも可能ですが、サイドゲートで設計する方が自由度が大きくなります。ピンゲートにする場合、直径は最小0.6mmφ、通常0.8~1.2mmφが多く、好ましくは1mmφ以上です。

ゲート位置は重要であり、ウエルド部および繊維状フィラーの異方性に注意が必要です。

 

(5) 成形品の肉厚

0.8mm以上の均肉設計が原則です。肉厚0.2mmtですと、1140A1は流動距離7mmが限度です。図4-2、表4-2にジュラファイドの流動性を示します。

 

図4-2 1140A1の流動長

 

 

表4-2 ジュラファイド®の流動性比較
0220A9
1130A1
1130A64
1130T6
1140A1
1140A6
0.9
1.0
1.3
1.0
1.0
1.2
1140A64
1140A7
1150A64
6150T6
6165A4
6165A6
1.4
1.9
1.2
1.2
0.7
0.8
6165A7
6465A62
6565A6
6565A7
2130A1
3130A1
0.9
1.2
0.8
1.3
0.9
1.7
6345A4
7140A4
1.6
1.1
  1140A1を1.0とした時の流動長
 

使用金型

シリンダ温度

金型温度

射出圧力

: バーフロー(1mmt)

: NH320-320-305-290℃

: 150℃(6565A6のみ100℃)

: 73.5MPa

 

 

(6) 抜き勾配

1~2度が標準です。寸法精度を要する場合、1/4~1/2程度の抜き勾配とします。

 

(7) エアーベント

深さ0.005~0.008mm、幅5mm、長さ2~3mm程度のエアーベントを設置して下さい。エアーベント端0.5~1mm深さで金型を削り込み、大気に開放します。スプル、ランナ部からもエアーベントを取ると効果的です。エアーベントが不充分だと光沢不良、ウエルド強度の低下、ショートショットおよび焼けをまねく恐れがあります。

 

(8) リブ

リブはその高さや、厚さを大きくすることにより、リブの数を増す方が効果的です。リブの床面積は、成形品厚さの1/2、抜き勾配は2~3度以上と大きく取ります。

 

 


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