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レーザー溶着のポリプラスチックス材料への適用

 

レーザー溶着のポリプラスチックス材料への適用

1. はじめに

約100年前にフェノール樹脂が植物以外の原料から人工的に合成されて以来、様々なプラスチックが開発されてきました。当初コップや皿などの日用雑貨や日用品等に使われていたプラスチックは現在、テレビやスマートフォンなどの電気製品、自動車や飛行機部品等にまで使われるほど発展を遂げました。

ポリプラスチックスが販売しているエンジニアリングプラスチックは、軽量で電気絶縁性があり錆びないといったプラスチックの特長に加え、耐熱性や強度に優れるため、特に耐久性の求められる自動車や電気・電子分野で多く採用されています。

採用例の一つに基板やセンサー、アクチュエーターなどを水分や粉塵、破壊から守る筐体があり、これらプラスチック製の筐体の接合には、接着、ネジ止め、かしめ、溶着と様々な工法が採用されています。そこで本稿では、様々な接合方法の中から、レーザーによる樹脂溶着技術を紹介いたします。



2. レーザーによる樹脂溶着について

溶着は熱可塑性樹脂に適用される工法で、樹脂製品の接合したい部分に熱を加えて溶融させた後、その部位を密着し冷却固化して接合させるものです。

溶着工法の種類は、超音波溶着や振動溶着、熱板溶着が代表的なものですが、この10年ぐらいでレーザー溶着の普及が進んでいます。

レーザー溶着とは、プラスチックのレーザー透過性を利用し、カーボ

ンブラックなどレーザーを吸収する添加剤を加えた材料と組み合わせて接合させる工法です。

レーザー溶着のプロセスを図1に示します。



図1:レーザー溶着プロセス

レーザー溶着では800~1200nm前後の可視光よりもやや長い波長のダイオードレーザーやYAGレーザーが一般的に使用されています。この波長領域でレーザー透過性と吸収性が確保できれば接合可能であり、色素やレーザー吸収剤を選ぶことで着色された樹脂製品を接合することも可能です。

従来の溶着工法では、超音波や振動、輻射熱などが筐体に内装される精密部品(基板やセンサー等)に少なからずダメージを与える可能性があるのに対し、レーザー溶着はピンポイントで接合したい部分のみを溶融させるため、音や振動などの影響がありません。また、複雑な形状に接合が可能で、自動化しやすいということも普及の一因となっています。

 

表1は弊社製品についてレーザー溶着の可否を示したものです。DURACON® POM、TOPAS® COCは一部のグレードを除き、レーザー溶着が可能です。DURANEX® PBT、DURAFIDE® PPS、LAPEROS® LCPは製品肉厚など条件を選ぶことで溶着することができます。


表1 当社取り扱い樹脂のレーザー溶着性
樹脂 POM PBT PPS LCP COC
弊社製品名 DURACON® DURANEX® DURAFIEDE® LAPEROS® TOPAS®
レーザー溶着性
○:溶着可能、△:条件によって可能

レーザー溶着のメリット

・製品に熱や振動、超音波などを直接与えないため、基板など内部の精密部品にダメージ

   を与えない

・磨耗粉などがなく溶融バリが少ないため外観・意匠性に優れる

・他の溶着工法と比較して溶着前後の寸法変化およびそのバラつきが小さい

・接合部を特殊なジョイント形状にする必要がない

・任意の部分を溶着することが出来るため、製品の設計自由度に優れる

・溶着時に音や振動が発生しないため、作業環境に優れる

 
レーザー溶着の注意点

・溶着界面の隙間は0.1mm以下にする

・溶着部およびその近傍にゲートを設置しない

・工業的に製品化するには透過材料は約20%以上の透過率が必要

・透過材料の溶着部分の厚みは一定にする

・異物が溶着不良の原因となるため、透過材料に異物が混入しないよう管理する

・過剰なレーザー出力は樹脂を炭化、分解させるため、適切な溶着条件を選ぶ



3. DURANEX® PBTのレーザー溶着について

PBTは耐熱性、成形性、電気特性が良好でコストバランスに優れた樹脂のため、筐体などの用途に広く使用されています。

図2は、肉厚1mmでのPBTの透過スペクトルを示したものです。…


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2018/01/16