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ジュラファイド(R) PPS 低塩素グレードの紹介
ジュラファイド® PPS 低塩素グレードの紹介 |
1. はじめに |
ポリフェニレンサルファイド(PPS)は結晶性エン ジニアリングプラスチックで、ベンゼン環と硫黄が交互に繰り返される分子構造をしています。PPSの融点は280-290℃、UL連続使用温度は200-240℃と非常に高い耐熱性を示すことから、特に、スーパーエンジニアリングプラスチック(以下、スーパーエンプラ)に分類される樹脂です。PPSは、機械特性と寸法精度に優れ、樹脂自体が難燃性を示します。また、200℃以下でPPSを溶解する有機溶媒はなく、フッ素樹脂に匹敵する耐薬品性を備える等の特徴を持っています。 PPSの用途としては、コネクター、スイッチ、モーターインシュレーター等の電気電子分野が従来からの主な事例として挙げられますが、近年は自動車分野での使用比率が最も高くなっています。これは、金属からの代替による軽量化、射出成形による設計自由度の向上やトータルコストの低減効果、更にこれまでの採用実績の蓄積で得られたPPSへの高い信頼性によるものと考えております。 自動車部品の採用例としては、各種センサーハウジング、ECUケース、パワーモジュール部品、電動ウォーターポンプ等が挙げられ、耐熱水性に優れることから水道の混合水栓や給湯器の電磁弁等の水廻り部品へも多く使用されています。 今回紹介するジュラファイド® PPSの低塩素グレードは、独自のポリ マー製造法とコンパウンド技術をベースにしており 、各種用途に応じたグレードをラインアップしております。市場における低ハロゲン化のニーズ(製品中含有量900ppm以下)に対応できる材料として、ラぺロス® LCP樹脂、ジュラネックス® PBT NFシリーズと並んで弊社の低ハロゲン製品シリーズの一つとして展開しています。 |
2. 低塩素PPS開発の背景 |
PPS樹脂は、難燃剤を使用せずにUL94 V-0規格を満足していることから、従来から多数のコネクター、スイッチ等の電子部品に採用されてきました。中でもジュラファイドは、製品中のイオン性金属不純物が少なく、厳しい電気的特性が要求される分野や半導体冶具等にも採用されています。 昨今、スマートフォンやパソコン等の情報端末機器においては、欧米メーカーを中心に、ハロゲン系難燃剤を添加した材料を使用しない動きが強まっており、PPSについては製品中の塩素量が少ないグレードが求められる事例が多くなっています。 PPSは通常、図1に示すようなプロセスで合成されます。原料としてパラジクロロベンゼンを使用するため、ポリマー鎖の末端として残存する塩素や副生する塩化ナトリウム等により、PPSは500-5,000ppmの塩素を含有しています。図1のプロセスで製造する限り、従来技術ではPPS中の大幅な塩素量低減には生産性の低下や、工程の追加による大きなコストアップを伴うことが予想され、市場ニーズを満たす塩素含有量900ppm以下を達成するのは極めて困難と考えられていました。 当社では、低ハロゲン化に対する顧客の要請に応えるため、PPS原料ポリマーの製造元である(株)クレハと協力し、直鎖型ポリマーの製造法をベースに重合技術の改良を進めました。更に、独自のコンパウンド技術を融合し、製品中の塩素量を大幅に低減した低塩素グレードを開発しております。ガラス繊維40%充填の標準グレードとして開発したジュラファイド 1140A66をはじめ、その後、各種用途に応じたグレードを拡充してきました。これら低塩素グレードは塩素濃度を900ppm以下に抑制している以外は通常のグレードと同等で、PPS樹脂が本来持っている優れた機械的特性や耐薬品性等はそのまま維持しております。 以下の項目では、各種低塩素グレードの特徴について紹介します。 |
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図1:PPSの重合反応式 |
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3. 標準グレード・高流動グレード |
ジュラファイド 1140A66はガラス繊維40%の低塩素標準グレードです。最大の特徴は、製品中の塩素濃度を900ppm以下に抑制したガラス繊維40%グレードという点にありますが、機械物性についても十分な特性を示しています。(表1) |
表1 ジュラファイド® PPS 1140A66の物性一覧 |
グレード |
1140A66 |
1140V1 |
|
特徴 |
低塩素 |
低塩素・高流動 |
|
用途 |
コネクター・一般 |
コネクター |
|
<項目> | <単位> |
||
密度 | g/cm3 |
1.66 |
1.68 |
溶融粘度(310℃、1000/s) | Pa・s |
260 |
(120)1) |
引張強さ | MPa |
185 |
130 |
引張破壊ひずみ | % |
1.7 |
1.2 |
曲げ強さ | MPa |
260 |
210 |
曲げ弾性率 | MPa |
13,200 |
14,300 |
シャルピー衝撃強さ | kJ/m2 |
9 |
10 |
燃焼性 | UL-94 |
V-0 |
V-0 |
塩素量 | ppm |
≦900 |
≦700 |
※上記値は、測定値の代表例であり品質保証値ではありません。 ※塩素量は弊社測定法による結果 1) 溶融粘度:340℃の測定値 |
また、低塩素ポリマーをベースに流動性を高めたジュラファイド 1140V1(ガラス繊維40%)は極めて優れた薄肉流動性を示しております(図2)。これら1140A66と1140V1は、主にコネクター用途で市場での実績を重ねております。 |
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図2:流動長の測定結果(厚み:0.5mm、射出圧力:100MPa) ※シリンダー温度:1140A66 320℃、1140V1 340℃ |
4. おわりに |
2007年頃より、パソコンや携帯電話等の情報端末分野において欧米メーカーを中心にハロゲン含有量の多い材料の使用を避ける働きが強まってきました。この低ハロゲン材料のニーズは、近年販売が飛躍的に拡大しているスマートフォンやタブレット端末においても踏襲されており、今後もこの流れは継続するものと予想されます。 ポリプラスチックスでは、上述で紹介したジュラファイド低塩素PPSシリーズと並んで、ラペロス、ジュラネックス NFシリーズを低ハロゲン製品群として展開して行きます。市場ニーズと用途に応じて、最適な材料とグレードを提案できるよう積極的に低ハロゲングレードラインアップを開発・拡充していく所存です。用途に応じてご評価いただき、今後とも弊社材料をご活用いただけることを願っています。 |
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2018/12/10 |