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高強度・高クリープ・良摺動性を兼ね備えた ジュラコン®POM WW-09


ジュラコン® POM新グレード紹介:
高強度・高クリープ・良摺動性を兼ね備えたWW-09



1. 背景・市場ニーズ

当社はPOMのリーディングカンパニーとして、これまでに様々な特性を有したグレードを市場に投入してきました。中でもPOMの長所である摺動性をさらに高めたグレードは、その用途に合わせて数多くのグレードをラインナップしています。近年、自動車の電動化が進むに伴い、静音化の要求がより一層高まってきており、摺動グレードが必要とされる場面も増えてきています。一方で、燃費性能の向上も依然として重要なキーワードであり、各部品の軽量化や省スペース化も求められています。このような状況の中、摺動グレードにも静音性といった摺動特性だけではなく、薄肉化によって軽量化・省スペース化に貢献できるような高負荷・高加重の環境における耐久性が求められるようになってきています。



2. 課題・解決策

これまで当社が開発してきた摺動グレードは、成形性を考慮して流動性の良好なポリマーを主に使用してきました(表1)。これらのポリマーは分子量が小さいため、高流動性が得られる反面、クリープ特性や疲労特性といった長期特性が低くなるという特徴を持っています。また、摺動性を付与するために添加する各種摺動改良剤も、軟質な化合物を用いるため、添加量が多くなるにつれ機械的性質(引張強度や弾性率など)が低下していきます。そのため、一般的な摺動グレードは十分な摺動性を確保するために、初期強度や弾性率、クリープ特性をはじめとした短期および長期の機械的性質が低くなっている傾向があります。しかしながら、前項で述べたような耐久性への要求が高まっていることから、機械的性質と摺動性の両立を目指したのが今回紹介するジュラコン®POM WW-09となります。

ジュラコン WW-09は高い初期強度およびクリープ特性を実現するために、高分子量のポリマーを使用し、当社独自の分子設計および重合技術によって球晶を微細化することで、機械的性質の向上を達成しました。図1にジュラコンの標準グレード(M25-44)および高強度グレード(WW-09)の偏光顕微鏡による球晶観察結果を示します。標準グレードに比べ、高強度グレードでは球晶が微細になっていることが確認できます。また一般的に摺動改良剤の添加は機械的性質を低下させることから、摺動改良剤の種類、組み合わせ、量などの最適化を行い、標準グレード相当の機械的性質を保ったまま摺動性を付与することに成功しました。


表1:ジュラコン® POMの主要な摺動グレードの物性値比較(全体図はこちら

項目 規格 単位 M25-44
高粘度
WW-09
高粘度
AW-09
高粘度
SW-01
中粘度
NW-02
低粘度
LW-02
低粘度
JW-03
超低粘度
MFR (190℃, 2.16kg) ISO 1133 g/10min 2.5 2.5 3.0 7.0 20 27 46
引張強さ ISO 527-1,2 MPa 59 58 54 50 52 53 54
引張破壊呼びひずみ ISO 527-1,2 % 40 40 30 20 20 45 35
曲げ強さ ISO 178 MPa 81 75 70 75 72 76 79
曲げ弾性率 ISO 178 MPa 2350 2200 2050 2500 2200 2350 2400
シャルピー衝撃強さ ISO 179/1eA kJ/m2 8.0 9.0 8.0 5.4 5.9 6.0 5.3

※スクロールしてご覧ください。


図1:ジュラコン®POM 標準グレード(左)および高強度グレード(右)の球晶状態

※球晶とは、結晶性高分子で見られる球状に成長した結晶の集合体。球晶同士の界面が力学的に弱いことから、変形時に界面に応力が集中し破壊の起点となります。球晶を細かくし界面を分散させることで応力の集中を抑制することができ、強度および弾性率が向上します。



3. ジュラコン®POM WW-09の特徴

ジュラコン WW-09は、(1)高強度かつ(2)高クリープ性を有する(3)良摺動性グレードです(図2)。また、高粘度タイプの標準グレードと同等の成形性を有しています。WW-09の長所である各項目について詳しく説明していきます。


図2:ジュラコン®POM 各摺動グレードの特徴

3-1. 機械的性質

表1に示す通り、WW-09は従来の摺動グレードと比較して高い機械的性質を有しており、高粘度の標準グレードであるM25-44に近い物性を保持しています。前項で述べましたように、従来の摺動グレードは摺動性を付与する目的で材料を変更した際に強度が低下してしまう傾向があり、それを製品設計や負荷の低減等で補わなければならない場合がありました。しかし、WW-09は標準グレードに近い物性を有していることから、そのような心配が少ないことが特徴です。


3-2. クリープ特性

WW-09は高粘度タイプのポリマーを使用しているため、他の摺動グレードと比べて良好なクリープ特性を示します(図3)。前項で説明した短期的な性質と同様、長期での耐久性も併せ持っているので、長期間荷重がかかり続けるような用途においても標準グレードに近い製品設計でご使用いただけます。


図3:ジュラコン®POM 各摺動グレードのクリープ特性

3-3. 摺動特性

WW-09は他の摺動グレードと同様に良好な摺動特性を示しますが、このグレードは摺動時の静音性が考慮されている点も特徴の一つです。

図4は各摺動グレードが同材で摺動した際に鳴き音を発生する面圧を示しています。POMはポリマー自身の特性として良好な摺動性を有していますが、POM同士で摺動した際に鳴き音が発生しやすいという短所があります。この性質はデータとしても現れており、摺動グレードではないM25-44は0.1MPaという低面圧であっても鳴き音が発生してしまいます。一方で、AW-09のような摺動グレードは、面圧が3MPa程度までは鳴き音が発生することはありませんが、それ以上の面圧になると鳴き音が発生します。NW-02は測定上限の面圧9.8MPaでも鳴き音が発生せず、極めて良好な静音性を示しますが、実際の用途においてこれほどの面圧がかかるケースは限定的だと思われます。WW-09は機械的性質とのバランスを考慮して、実用条件で一般的に発生しうる面圧の上限値として5MPaを想定し、その面圧を越える鳴き音耐性を持つように設計されています。


図4:ジュラコン®POM 各摺動グレードの鳴き音発生面圧(対同材)


4. まとめ

ジュラコン WW-09は摺動性・強度・クリープ特性を同時に満足させることのできる新グレードです。破壊が懸念される高荷重下での使用や、十分な肉厚が取れない場合などに加え、摺動音、磨耗など摺動特性も併せて要求される部品への採用が期待されます。また、標準グレード並みの機械的性質がありますので、従来の摺動グレードよりも軽量化・省スペース化が可能です。

当社のジュラコン摺動グレードは今回ご紹介のWW-09以外にも幅広いラインナップを有しており、お客様のニーズに応じたご提案が可能です。

ポリプラスチックスは、エンジニアリングプラスチックの専業メーカーとして、今後も市場ニーズに適した材料開発を進めて参ります。





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2019/05/09