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ジュラネックス(R) PBT 長期特性改善材料の紹介


ジュラネックス® PBT 長期特性改善材料の紹介



1. はじめに

ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂は機械的特性や耐熱性、成形性などに優れ、ガラス繊維で強化することで強度や剛性を飛躍的に向上させることができます。また、難燃剤の添加によって容易に難燃化することも可能なため、自動車分野から電気・電子分野に至るまで様々な工業製品に幅広く使用されています。しかしながら、PBT樹脂は耐加水分解性の懸念、また、使用環境条件が厳しいインサート成形品でのヒートショック性要求レベルにより、採用が難しいケースがありました。今回は、これらの懸念点を大きく改善し、より広い範囲で使用可能なジュラネックス® PBT特殊グレードを紹介します。



2. PBTの長期特性改善ポイント
2.1 耐加水分解性

PBT樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などと同じポリエステル樹脂の1つであり、ジカルボン酸成分とジオール成分とから形成される連続したエステル結合を分子構造内に有しています。このエステル結合は、特に高温環境下では水分による分子鎖の切断(加水分解)を受けやすく、樹脂の劣化を引き起こす原因となり得ます。そのため、PBTの耐加水分解性は製品の長期的な信頼性を確保する上で重要な特性の1つとして位置付けられます。


図1:PBTの加水分解反応

2.2 耐ヒートショック性(耐冷熱衝撃性)

PBTを用いた製品の中には工程の簡略化や部品点数の削減、製品のダウンサイジング化などを目的に、樹脂と金属部品を複合させるインサート成形が適用されるものも少なくありません。インサート成形は非常に有用な工法ですが、製品の使用環境温度に大きな変動幅がある場合、金属と樹脂の線膨張係数の差によって樹脂部が疲労破壊する可能性を常に考慮しておく必要があります。物質は高温になると膨張し、低温になると収縮する特性を持っていますが、その大きさ(線膨張係数)は物質によって異なります。樹脂の線膨張係数は金属よりも大きく(温度変化に対する膨張・収縮の度合いが大きく)、金属を樹脂が包むような形状では、環境温度の低下による樹脂の収縮を金属が抑制してしまうため、樹脂内部にひずみが生じます。このような状況下で温度昇降を繰り返すと、ひずみの発生によるダメージが蓄積されていき、最終的には疲労破壊を引き起こしてしまいます。


図2:ヒートショック破壊のメカニズム


3. ジュラネックス® PBT長期特性改善材料

当社では、これらの長期特性を必要とされる製品向けに、ジュラネックス 201HR、ジュラネックス LTシリーズをラインナップしております。


図3:ジュラネックス® PBT長期特性改善材料

3.1 ジュラネックス® PBT 201HR - 耐加水分解性PBT(非強化)

ジュラネックス 201HRは、従来のPBT樹脂が持つ良好な機械的特性や成形性はそのままに、樹脂の分子構造的な課題である加水分解性を大きく改善した材料です。高湿環境下での使用にも適したジュラネックス 201HRは、お客様の製品の長寿命化を可能にし、特に使用環境の厳しい自動車用コネクターに好適な材料です。


図4:ジュラネックス® PBT 201HRの特徴と耐加水分解性

表1:ジュラネックス® PBT 201HRの物性

項目 単位 試験方法 201HR 201AC
非強化
耐加水分解
非強化
標準材
密度 g/cm3

ISO1183

1.31 1.31
引張強さ
引張破壊ひずみ
MPa
%
ISO527-1,2 60
57*
60
45*
曲げ強さ
曲げ弾性率
MPa
MPa
ISO178 88
2,420
86
2,410
シャルピー衝撃強さ
(ノッチ付き)
kJ/m2 ISO179/1eA 3.7 3.3
荷重たわみ温度
(1.8MPa)
ISO75-1,2 68 70

* 引張破壊呼びひずみ
上記の値は材料の代表的な測定値であり、材料規格に対する最低値ではありません。


3.2 ジュラネックス® LTシリーズ - 耐ヒートショック性・耐加水分解性PBT(GF強化)

ジュラネックス LTシリーズは、樹脂のもつ靭性を向上させると共に環境温度の変化により発生するひずみも緩和させることで耐ヒートショック性が大幅に改善されています。その性能は樹脂の中でトップクラスの耐ヒートショック性を有することで知られるポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を凌ぐほどです。


図5:ジュラネックス® PBT LTシリーズの耐ヒートショック性

ジュラネックス LTシリーズはまた、非常に優れた耐加水分解性も有しています。その優れた特性から、お客様の製品の高性能化、長寿命化を可能にし、従来のPBT樹脂では適用できなかった様々な部品にも幅広くご使用いただけます。使用環境の厳しいパワーモジュール、DC/DCコンバータ、モーターインシュレータ、EPSなどの部品に好適な材料です。



図6:ジュラネックス® LTシリーズの耐加水分解性

表2:ジュラネックス® LTシリーズの物性

項目 単位 試験方法 LT530HR LT530FR 3300
GF30%強化
耐ヒートショック
耐加水分解
GF30%強化
耐ヒートショック
耐加水分解
難燃
GF30%強化
標準材
密度 g/cm3

ISO1183

1.52 1.63 1.53
引張強さ
引張破壊ひずみ
MPa
%
ISO527-1,2 135
3.0
100
2.6
140
2.2
曲げ強さ
曲げ弾性率
MPa
MPa
ISO178 210
8,100
155
8,500
220
9,030
シャルピー衝撃強さ
(ノッチ付き)
kJ/m2 ISO179/1eA 12 10 10.5
耐ヒートショック性
-40℃⇔140℃
サイクル 弊社法 >1,000 >1,000 40
燃焼性 UL94 HB相当 V-0 HB

上記の値は材料の代表的な測定値であり、材料規格に対する最低値ではありません。



4. おわりに

本稿では長期信頼性で問題視される加水分解とヒートショックのメカニズムの解説を中心に、その対策に有効なグレードとして当社のジュラネックス 201HR、LTシリーズをご紹介いたしました。これらの特殊グレードは、PBTの優れた特性をそのままに、耐加水分解性や耐ヒートショック性といった長期特性が大幅に改善された材料です。今回の提案がお客様の製品・部品設計の一助になれば幸いです。




【関連資料】

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 物性表はこちら:

 本文中:

【非強化】◆201HR  ◆201AC
【GF30%強化】◆LT530HR  ◆LT530FR  ◆3300
 本文以外:
【耐加水分解・GF30%強化】
 ◆750AM  ◆733LD  ◆531HS  ◆552HS
 ◆353RA  ◆330HR
【耐加水分解・高耐トラッキング ・GF20%強化】
 ◆522HR

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2020/9/14