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耐アルカリストレスクラッキング特性を実現 ジュラネックス® 532AR


PBT新グレード:耐アルカリストレスクラッキング特性を実現
ジュラネックス® 532AR


【開発背景】

ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)ジュラネックス®は物性バランスに優れ、ガラス繊維の添加により強度や剛性・耐熱性を飛躍的に向上させ、難燃剤の添加により容易に難燃化することができます。添加物による改質や機能の付与が比較的容易な樹脂であるため、幅広いグレードラインナップが市場展開されており、自動車分野をはじめ電気・電子分野など、さまざまな工業製品に幅広く使用されています。

特に自動車分野は技術開発が盛んで、走る・曲がる・止まるといった自動車の基本性能の向上に加え、特に近年では安全・快適・環境配慮などの視点からも製品や部品の開発が進められています。これらの新たな部品開発にともなって、ECUケースやセンサー・コネクタ等の部品素材に優れた電気特性を有するジュラネックスの採用が増えています。 また、部品点数の増加により部品の設置スペースが不足し、PBTを使用した部品も含め、さまざまな部品がシャーシ部(足回り部)などの車両下部に設置されるケースが増えています。車両下部に設置される部品は、路面と部品の距離が近く、水や泥はね等により周辺にある金属部品に錆が発生しやすい環境にあるため、錆との接触が起こりやすい状況にあります。

図1は鉄が錆びるメカニズムを示したものです。鉄は腐食して錆びるだけでなく、錆びが発生する際に生じるアルカリ物質が樹脂にダメージを与えクラックを発生させること(ストレスクラッキング※)があり、部品の機能を損なってしまうことが懸念されます。

特に降雪地域で散布される融雪剤は、鉄の不動態被膜などを破壊し、錆びやすくするため樹脂のストレスクラッキング対策が必要となります。


図1:錆発生のメカニズム

当社ではPBTのアルカリ環境下の耐ストレスクラッキング性に対する改質検討を進め、新グレードジュラネックス532ARを市場展開することに成功しました。ジュラネックス532ARは、アルカリ環境下の耐ストレスクラッキング試験(当社試験法)において、従来グレードと比較して、優れた耐久性を有するだけでなく、耐加水分解性や耐ヒートショック性も優れています。

 

※ストレスクラッキングとは

樹脂に薬品または応力のどちらかのみ負荷された場合は影響ないが、応力と薬品の双方が負荷された場合にクラックや破壊が生じる現象で環境応力破壊とも呼ばれます。成形時の残留応力や温度変化により生じた内部応力でもクラックが発生することがあります。

 

次に自動車部品の信頼性や寿命を高める可能性のあるジュラネックス532ARの特長についてご紹介します。



【耐アルカリストレスクラッキング性グレード ジュラネックス® PBT 532ARの特長】

ジュラネックス532ARはアルカリの樹脂内部への浸透を低減させ、さらに発生応力を減少させるために靱性を付与することで、成形品がアルカリに接触した際のクラック発生リスクを低減させることに成功しました。

表1に、グレードの特長について、ジュラネックス532ARと従来グレードの位置付けを示します。ジュラネックス532ARは、耐ストレスクラック性に加え、シャーシ部の使用環境で要求される耐加水分解性、耐ヒートショック性についても、従来グレードと比較して同等以上の性能を有していることを確認しております。そのため、水や泥はね、融雪剤をはじめとする薬品などと接触する可能性のある自動車のシャーシ部(足回り部)や車両下部に設置される部品としての使用に適しています。

表1:ジュラネックス® PBT 532ARの位置付け

グレード名

特長

機械特性・

耐熱性

耐加水分解性

耐ヒートショック性

耐アルカリ性

532AR

GF30% 耐アルカリ

531HS

GF30% 耐ヒートショック

 

330HR

GF30% 耐加水分解

   

3300

GF30% 標準

     

 

【アルカリ浸漬時の耐ストレスクラッキング性の評価結果】

図2のアルカリ浸漬時の耐ストレスクラッキング性評価結果(当社試験法)において、一般材のジュラネックス3300や耐加水分解・耐ヒートショック材料のジュラネックス531HSは2時間以内にクラックが発生してしまいますが、ジュラネックス 532ARは200時間まで浸漬してもクラックは発生せず、優れた耐ストレスクラッキング性であることを示しています。

 

<試験方法>

・穴付の80□×1mmt試験片からウエルド部を短冊状に切削

・短冊状試験片に1%のひずみを負荷し、強アルカリ性の10%水酸化ナトリウム溶液に

 常温で浸漬

・ひずみが負荷された状態の短冊試験片にクラック発生する時間を測定


 

図2:ジュラネックス® PBT 532ARの耐アルカリストレスクラックの評価結果


【ジュラネックス® PBT 532ARの耐加水分解性、耐ヒートショック性】

PBT樹脂は物性バランスに優れ幅広い自動車部品に使用されていますが、加水分解というポリエステル系樹脂の唯一ともいえる弱点があります。これは非常に高い温湿環境下の場合、水分によりポリマー鎖が切断され材料劣化するという現象です。ジュラネックス532ARは耐加水分解処方を施しており一般材に比べ非常に高い耐久性を有しています。(図3)

 

図3:ジュラネックス® PBT 532ARの耐加水分解性(121℃×100%RH 203kPa)

 

またエンジン付近に設置される電装部品やセンサーなどは、金属インサートされることが多く、エンジンの始動・停止による周辺温度の急激な変化によりヒートショック破壊が問題となるケースがあります。これは金属と樹脂の線膨張率差が約10倍程度あることに起因しています。ジュラネックス 532ARは図4に示すように耐ヒートショック性にも優れており、厳しい環境にも耐えうる優れたグレードです。

 

図4:ジュラネックス® PBT 532ARの耐ヒートショック性(1サイクル -40℃⇔140℃)

 



【今後の市場展開について】

耐久性・安全性・信頼性の要求が益々高くなる自動車部品に対して、ジュラネックス 532ARは、アルカリ物質によるストレスクラッキングを低減するだけでなく、ヒートショック破壊やPBT樹脂の弱点である加水分解にも対策を施しています。自動車のシャーシ部やエンジンルーム内などの樹脂にとって厳しい環境下においても、高い信頼性と寿命を兼ね備えたグレードです。


当社ジュラネックスの幅広いグレードラインナップは、お客様が開発する自動運転技術や安全走行などに必要となるセンサーやECUケース等の電装系部品に最適なグレード提案が可能です。

ポリプラスチックスでは、引き続き市場ニーズや用途に応じたグレードを生産者のみなさまに提供できるよう開発を進めて参ります。



【関連情報】

ジュラネックス® PBTの設計技術(WEB@TSC会員様専用)




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2019/01/17