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変形

目次 はじめに 成形条件の選定 成形加工特性 成形品品質 金型設計 安全上の注意 不良対策
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4.2 変形

成形品各部が不均一に収縮すると不均一な成形ひずみが発生し、これが変形の主原因となります。すなわち成形品が均一に収縮すれば変形は起りません。

成形収縮が不均一になる原因は次の3つが主なものと考えられます。ジュラネックス® PBT強化グレードでは流動方向に対する収縮率の異方性が最も大きな要因です。

1. 成形品肉厚の不均一

2. 金型温度、キャビティ内圧の不均一

3. 流動方向による収縮率の異方性

(1) 形状設計と変形

変形に対する形状の影響は非常に大きいため機能をそこなわない範囲で、できるだけ変形が少なくなる形状にすることが重要といえます。代表的な形状について変形の傾向を示します。

 

(a) 円板状成形品

ジュラネックス3300では、円板状成形品の真円度、面振れは以下のようになります。

 

真円度 :

直径60mmで0.15mm以下が1つの目安。
直径がこれ以下の時は真円度と直径はほぼ比例。

 

面振れ :

直径60mmで0.3mm以下が1つの目安。直径との関係は上に同じ。

 

(b) 箱形成形品

3300のスパン距離と内ぞりとの関係は図4-2のようになります。ばらつきが大きくなっていますが、大体の内ぞり量を推定することができます。

ジュラネックス図4-2

ゲート設計によっても内ぞりを小さくできます。すなわち表4-1のようにサイドゲードより中心からのピンゲートの方がよく、またコアを水冷するのも有効でしょう。

例えば水冷すると2000、2002ではコア水冷なしのものの20~30%、ガラス繊維入りグレードでは約60%程度の内ぞりとなります。

表4-1. ゲートと箱型成形品の内ぞリ (単位 : mm)

グレード サイドゲート ピンゲート
2000 0.91 0.65
2002 0.90 0.69
3105 1.20 0.72
3200 1.15 0.94
3300 1.18 0.99
3400 1.09 0.92
6300B 0.80 0.65
7400W 1.05 0.80
 

注1) 80L x 40W x 20h x 2t mm の箱

注2) サイドゲート 5W x 3t mm, ピンゲート 1mmΦ

注3) 金型温度 60℃

 

(c) L字形成形品

L字形成形品の倒れ変形と断面形状との関形を表4-2に示します。形状⑧のような三角リブをつけるのが最も有効な方法です。

表4-2. L字形成形品の倒れ角度(度)

金型
温度
(℃)
グレード 断面形状
30 3300 2.5 2.5 2.5 2.5 3.0 2.5 2.5 0
80 3300 3.0 3.0 3.0 3.0 - 3.0 3.0 0
 

成形条件 : 2.1項を参照ください。

直角部の内・外の金型温度差をつけると表4-3のように2000、2002、6300Bのようなグレードでは効果があります。

ガラス繊維入りグレードの場合は、ゲート位置によって倒れ角が異なります。すなわち表4-4のように従来のように先端部にゲートをつけるより、コーナ部にゲートをつけると倒れ角が小さくなるケースがあります。

表4-3. L字形成形品の倒れ変形に対するコーナー部冷却の効果 (単位 : 度)

グレード 均一温調金型 コーナ内側水冷
2000 1.9 0.5
2002 2.7 0.7
3300 3.3 2.7
6300B 2.2 0.7
7400W 3.6 2.8

表4-4. ゲート位置とL字形成形品の倒れ変形 (単位 : 度)

グレード 先端部ゲート コーナ部ゲート
2000 2.1 2.8
2002 2.4 3.0
3105 3.9 1.7
3200 4.1 1.7
3300 3.2 1.6
3400 3.1 1.4
6300B 1.9 2.1
7400W 3.2 1.8

 

(d) リブ付平板

平板の剛性を向上させる方法としてリブをつけることがありますが、リブのつけ方によっては変形が大きくなります。その例を表4-5に示します。

両側に対称にリブがある形状①と平板⑥と同程度の変形ですが、片側にしかリブのないものではリブ側が凸になるそりが相当大きくなります。これらの結果は、逆にそりを矯正するための形状変更にも利用できることになります。

表4-5. リブ付平板の「そり」 (単位:mm)

金型温度
(℃)
グレード 断面形状
30 3300 0.04 0.07 0.44 0.40 0.50 < 0.04
80 3300 0.07 0.09 0.50 0.64 0.70 0.07
 

 

符号:リブのある側(または背の高いリブのある側)が凸になるのを+、凹になるのを-とする。

 

(2) ゲート設計と変形

[例1] 羽根車 (3300)   (単位:mm)

ゲート数 1点 2点 3点
真円度 0.22 (0.05) 0.24 (0.07) 0.14 (0.03)
面振れ 0.72 (0.25) 0.94 (0.06) 0.58 (0.00)
 

射出圧力は98MPa

( )は n=3 に対するR

 

ゲート: 1.5mmΦ (ピンゲート)

外径: 約65mm

平均肉厚: 約3mm

 

[例2] 円形成形品 (バルブNo.2ハウジング) (3300) (単位:mm)

ゲート配置 6点非対称 4点対称
真円度 0.15 0.15
面振れ 0.44 0.27

 

成形条件:表4-2 No.6参照

 

[例3] 円形成形品 (バルブ) No.1 上ぶた および 下ぶた (3300) (単位:mm)

(詳細は略図参照)

ゲート数 1点 2点 3点
上ぶた d1の真円度 0.07 0.18 0.05
A面の面振れ 0.18 0.16 0.08
A面フランジの倒れ (H) 0.22 0.26 0.14
下ぶた d2の真円度 0.14 0.27 0.10
B面の面振れ 0.28 0.45 0.21
 

射出圧力は98MPa

( )は n=3 に対するR

 

[例3]の成形品略図

 

1) 上ぶた : ゲートは正三角形の頂点上にあります。平均肉厚は約2mm。

ジュラネックス図表66-2

2) 下ぶた : ゲートは二等辺三角形の頂点上にあります。平均肉厚は約2mm。

ジュラネックス図表66-3

 

(3) 成形条件と変形

成形条件で変形に対する寄与率の大きいものは金型温度、キャビティ内圧(ゲートサイズ、充填速度、保圧時間など)冷却時間などです。

 

(a) 金型温度

一例として3300の円形成形品の結果を表4-6に示します。金型温度が低いほど、真円度や面振れがよくなる傾向が認められます。

表4-6. 3300製円形成形品(バルブ)の真円度,面振れに及ぼす金型温度の影響

バルブ種類 金型温度
(℃)
直径
( mm)
真円度
(mm)
面振れ
(mm)
ゲート
No.2 45 - 48 59 0.14 0.26 4点ピン
60 - 65 0.15 0.27
No.3 40 - 50 45.3 0.07 0.11 1点ピン
50 - 70 0.12 0.14
No.4 40 - 50 62 0.10 0.11 1点ピン
50 - 60 0.10 0.16
No.5 45 - 55 61 0.11 0.24 4点ピン
60 - 68 0.13 0.26
No.6 40 63 0.16 0.21 3点ピン
70 0.24 0.32

 

(b) 射出・保圧時間

直径120mm厚み2mmの円板を中央1点ピンゲートで成形した時の射出・保圧時間と面振れとの関係を図4-3に示します。

射出・保圧時間がゲートシール時間より短かい場合には変形量が非常に大きいことが分かります。成形サイクル設定に際して非常に重要な点です。

ジュラネックス図4-3

(c) 射出速度

変形に対する射出速度の影響はそれ程大きくはありませんが、射出速度が速い方が変形が小さくなる傾向があります。その一例を表4-7に示します。

表4-7. 3300製羽根車の真円度と面振れに対する射出速度の影響

射出速度
(mm/sec)
射出圧力
(MPa)
真円度
(mm)
面振れ
(mm)
3 98 0.20 0.65
8 98 0.14 0.58
17 68 0.14 0.65
80 68 0.11 0.63

 


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