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  超音波溶着

超音波溶着とは

 超音波振動と同時に加圧力を加えることで、プラスチック製品の一部に強力な摩擦熱を発生させ、接合したい部分を溶融させ、接合を行なう工法です。


接合部のジョント形状例
(1)
スカーフ・ジョイント
 

 このジョイントは斜面による完全な面接触であり、一様な発熱が得られることや大きな溶着面積が得られることから、非常に強い溶着強度が得られ、また、気密性も保てます。

設計時の注意点

  • ジョイント部の傾斜角度は、角度を大きくすることで溶着面積を増やすことができますが、接合面で滑りにくくなるため、大きなエネルギーが必要となります。一方あまり鋭角にしすぎると、溶着時に圧入状態となり、ジョイント部の開きによる変形、溶融密着性の低下など、不良の発生を引き起こす可能性があります。そこで成形品肉厚を考慮し、30~60度程度の範囲で設定することが望まれます。
  • 溶着を行なうふたつの成形品を組み合わせた場合、入り込み方向の溶着代と、幅方向の溶着代を確実に設定することも大切です。使用グレード、要求性能によって、設定寸法は異なりますが、入り込み方向、幅方向とも、0.4~0.7mm程度の設定がひとつの目安となります。
  • 溶着時の篏合状態の安定性を保つため、ジョイント部にできるだけ大きなガイドを設定することが望まれます。その際、成形品のクリアランスの設定は大きなガタつきが発生せず、なおかつ圧入にならないような設定にすることが必要です。目安として片側0.05mm程度の設定が望まれます。
  • 溶着後の製品寸法(入り込み量)を安定させる目的から、ストッパーは確実に設定することが必要です。設定位置は溶着代が確実に溶融溶着できる位置に設定します。
  • 溶着時の溶融バリの発生を嫌う場合は、バリ溜まりの設定をおすすめします。
  • 次に代表的なスカーフ・ジョイントの設計例と、そのジョイント形状における溶着強度の例を示します。

(2)
ビート・ジョイント
 

 せん断溶着であり、振動方向の面接触によりジョイント部の均一な発熱が得られることから、気密性、強い溶着強度が得られます。しかし、溶着後のバリが外部へ発生するため、バリに対する制約がある場合の使用には注意が必要です。

設計時の注意点

  • ジョイント部の傾斜角度は、スカーフ・ジョイントと同様の考慮が必要となります。この場合、成形品肉厚を考慮し、40~50度程度範囲で設定することが望まれます。
  • 溶着代の設定としては、入り込み方向で溶着代として、傾斜部分を含め1.0~1.2mm程度、幅方向で0.3~0.5mm程度の設定がひとつの目安となります。入り込み方向の溶着代を変えることで溶着強度は変化できますが、あまり大きくしても溶着時、バリとなり外部に吐出するだけです。必要以上に設定しても意味がなく、逆に割れや気密不良等の発生が考えられますので注意することが必要です。また幅方向の溶着代も同様に適正な大きさにします。
  • クリアランスの設定はスカーフ・ジョイント同様、片側0.05mm程度の設定が望まれます。
  • ストッパーも同様に溶着代が確実に溶融溶着できる位置に設定してください。
  • 次に代表的なビート・ジョイントの設計例と、そのジョイント形状における溶着強度の例を示します。

(3)
シェア・ジョイント
   前述のスカーフ・ジョイントとビート・ジョイントの中間的なジョイントで、気密性が良く、円形以外の形状の溶着にも有効なため、よく使われるジョイント形状です。
 設計時の注意点は、スカーフ・ジョイントと同様になります。
次に代表的なシェア・ジョイントの設計例と、そのジョイント形状における溶着強度の例を示します。

(4)
エネルギ・ダイレクタ・ジョイント
   この方式は、ダイレクタと呼ばれる三角形の突起にエネルギを集中させ、衝突現象の繰返しによって発熱させるジョイントデザインです。
 形状的に単純ですので、接合部のスペースの制約も比較的小さくて済むなどの利点があります。
 しかし、当社材料のような結晶性プラスチックでは、極端な局部発熱による急激な軟化・溶融により圧着応力損失等が発生し、密着性が損なわれ気密不良の問題を起こす場合がありますので注意が必要です。

 

設計時の注意点

  • ジョイント部の三角形の突起は正三角形または二等辺三角形とし、先端部の角度は60~90度程度に設定することが望まれます。溶着代となる高さ方向の寸法は、設定角度との関係もありますが、0.5mm程度に設定することがひとつの目安です。
  • 三角形の突起が当たる相手側成形品の溶着部には、溶着時の製品の位置決め及び、溶融バリの外部吐出を防止するための溝を設定することをおすすめします。なお、溝の大きさは、溶着時溶融する三角形の突起の体積以上の大きさを確保する必要があります。この際、三角形の突起の高さは溝の深さに溶着代をプラスした高さになります。
  • 代表的なエネルギ・ダイレクタ・ジョイントの設計例と、そのジョイント形状における溶着強度の例を示します。

成形品の設計

(1)
接合部形状
   接合部の形状はできるだけ円筒形状にすることが望まれます。やむを得ず、角型、異形形状で設計する場合、各辺部は大きなRでつなげ、対称形状で設計することが望まれます。

ジュラコン図2-10

(2)
伝達距離
   溶着部までの距離が短いほど、溶着エネルギ損失が少なくでき良好な溶着が行なえます。
 しかし、ホーン側成形品が薄く大きい平板形状の場合、溶着位置を平面より少し立上げ、ホーン接触部から離すなどの成形品形状の見直しが必要となります。

ジュラコン図2-11

ジュラコン図2-12

(3)
ホーン接触側の成形品
   ホーンの接触する側の成形品はできるだけ軽量で、単純な形状が望まれます。
 ホーン接触側成形品に金属インサート、ボス等の付属部分があると、溶着エネルギの伝達が乱され溶着不良が発生しやすく、場合によっては共振によりインサート部の溶融、ボス等の突起部の破壊が発生します。したがって、突起物、インサート等は受け治具側に設定する必要があります。やむを得ずホーン接触側に設定する場合は、R付けなどの補強等を行ってください。
ジュラコン図2-13

(4)
ホーンの接触面
   ホーンの接触面及び接合面は一平面にして下さい。段付き等を設けると、溶着エネルギの伝達に不揃いが発生し、溶着不良が起こりやすくなります。

ジュラコン図2-14

(5)
変形
   溶着する成形品のソリ、変形はできる限り小さくすることが必要です。ソリ、変形がある場合、溶着面の均一接触が失われ、溶着状態のバラツキが発生し、強度低下、気密不良の問題が発生しやすくなります。

溶着条件

 超音波溶着を行なう条件としては溶着エネルギを印加する時間(発振、溶着時間)の長さと加圧力が大切な条件となりますが、その他にも重要な条件があります。

(1)
溶着機の能力
   溶着機は、現在、各社各種の溶着機が市販されていますが、溶着を行なう製品形状、寸法に合わせて適正な能力の機器を使用することが必要です。
(2)
ホーン振幅の設定
   溶着機の能力と同様に、溶着機器の設定で非常に重要な条件のひとつであり、溶着をうまく行なうには適正な設定のものを使う必要があります。当社材料の溶着では、最低でも40μm(両振幅)程度の振幅は必要であり、場合によっては70~80μm程度、必要になることもあります。
(3)
加圧力
   ホーンを成形品に押しつける力ですが、通常圧縮空気の圧力は0.1~0.3MPa(ゲージ圧)程度であり、場合によってはそれ以上にもなります。しかし、あまり高加圧になるとホーンが振動できなくなります。ガラス繊維充填グレードでは若干圧力を高くした方が良好な溶着ができます。
(4)
溶着時間
   材料の種類や形状で異なりますが、成形品によっては0.2秒で充分なものもあります。あまり長い場合の弊害としては、過溶着となり大量のバリや発泡を生じ、その部分から気密不良が生じやすい点に注意してください。
(5)
冷却(保持)時間
   当社材料は結晶性樹脂ですので、融点以下になればジョイント部は固まりますが、通常0.1~0.2秒は加圧下に保持します。
(6)
ホーン降下速度
   ビードジョイントではあまり早いと衝撃的な力がかかり圧入状態となってしまいます。またその他のジョイント方式の場合にも成形品を傷めてしまう場合もありますので、50mm/s程度にします。
(7)
発振開始時期
   ホーンが成形品へ接触する直前または同時に発振するのがよく、加圧状態の後発振すると振幅ロスを生じることがあります。
(8)
受け治具(図2-15)
   この治具の使用目的はジョイント部の自由な振動が妨害されない程度に成形品を固定させるためのもので、ジョイント部直下で受けるように金属、熱硬化性プラスチック等で設計する必要があります。
 また、エネルギーダイレクタ以外のジョイントで生じる横方向の変形をこの受け治具で拘束します。製品と受け治具とのクリアランスは両側で0.05~0.2mm程度にします。なお、ホーン面と受け治具面とは平行に保持しなければなりません。

超音波溶着強度の材料間の比較

 当社材料の代表グレードについて、超音波溶着強度の比較を示します。
 フォートロン 1140A1(ガラス繊維強化グレード)は他材料に比べて大きな強度を示しますが、その他は材料間にそれほど差はありません。

ジュラコン図2-16